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キルギスの医療制度の気候変動適応の必要性
December 4, 2024

なぜキルギスの医療システムは気候変動への適応が必要なのか

 

気温の上昇、山火事、大気汚染、厳しい気象現象は呼吸器系や循環器系の問題を引き起こしており、気候変動は身体的・精神的健康の両方に大きな影響を及ぼしていることが示されている。このような変化によって、アレルギーや感染症の有病率が高まるだけでなく、気候変動の影響により強い医療システムへの調整を余儀なくされている。( Setoguchi, S.、その他、2022)

気候変動がキルギスの公衆衛生に与える影響は深刻であり、医療分野における適応策の緊急性が浮き彫りとなっている。現行データの分析により、同国の気候変動リスクへの脆弱性が明らかとなり、医療制度における回復力強化のための取り組みが進められている。

 

 

なぜキルギスの医療セクターは脆弱なのか

 

2019 年、キルギスはGDPの4.5%を医療分野に割り当てたが、過去に比べて減少している(下図参照)。一人当たりの医療費は、世界保健機関(WHO)の ヨーロッパ地域で最低水準である(Moldoisaeva, S.、その他、 2022)。

 

図表:2000 年から 2019 年の医療費の動態

備考:棒グラフは一人当たりの医療費

青線:対GDP比

 

キルギスは国民皆保険制度を未だ達成しておらず、強制健康保険基金 (MHIF)がカバーしているのは人口の 69%に過ぎない。医療サービスの多くは自己負担が必要であるが、社会的・医療的に弱い立場にある一部の人々は免除される。保険加入者は、地域の医療機関に登録することで追加料金なしで一次医療サービスを利用することができる。一方で、保険未加入者や国家保証給付パッケージ(SGBP)に含まれないサービスを利用する場合は、全額自己負担となる (Moldoisaeva, S.、その他、 2022)。

2019年の強制健康保険への加入率は69%であり、2016年の76%から減少している。この減少要因として、加入手続きのデジタル化による重複記録の削減や、生産年齢人口の海外移住が挙げられる。 さらに、人口の18%と推定される国内移住者が強制健康保険制度に加入するために必要な書類を欠いている場合が多いことや、2017年のGDPの23.6%を占める非正規部門で働く人々が保険基金に拠出していない点も問題を深刻化させている。無保険者は強制医療保険に加入できるが、全員が加入するわけではないため、保険加入率の低下や医療部門の公的収入減少を招いている(Moldoisaeva, S. 、その他、2022)。

キルギスの医療制度は、低い医療費、限られた保険適用範囲、サービスへの不公平なアクセスなど、大きな課題に直面している。

 

気候に関連した疾病の増加

気温の上昇や異常気象(熱波、洪水、干ばつなど)は、感染症や非感染性疾患の発生率を増加させている。特に子ども、高齢者、慢性疾患を持つ人など、脆弱な集団は危険にさらされている。

 

食料安全保障の課題

2050年までに農業生産量が最大30%減少するとの予測は、があり、栄養不足による健康への影響が懸念されている。現在、キルギスの1歳未満の子どもの11%以上が低体重の問題を抱えており、食料安全保障上の課題が深刻化している。

 

インフラの被害

洪水や地滑りが頻発し、特に人の多い山間部では、医療サービスに支障をきたし、医療施設に被害が出ている。

 

熱波と健康リスク

フェルガナ渓谷やチュイ渓谷を含む南部地域は、猛暑の影響が強くなり、心血管疾患や死亡率を悪化につながっている。

 

 

医療レジリエンス強化のための現在の取り組み

 

インフラの近代化

2024年には22の新しい医療施設が建設され、すでに7つの施設が稼動している。先進医療技術への出資は、心血管疾患による死亡率の低下に寄与している。

 

医療のデジタル化

デジタル・ソリューションを通じて医療へのアクセスを向上させるため、国連との400 万ドル規模の共同事業が展開されている。この取り組みには、電子カルテ(EHR)、遠隔医療、重要な医療情報へのオンラインアクセスが含まれる。これにより、例えば、22万5,000人以上の乳幼児が適時に予防接種を受けられるようになり、20 万人の患者がオンラインで検査結果にアクセスできるようになるなど、医療提供の効率化が可能となる。

 

研究と協力

医療、農業、水資源管理部門のパートナーシップは、気候変動が公衆衛生に及ぼす相互に関連した影響に対処することを目的としている。キルギス共和国保健省の電子医療センターによると、同国で医療分野に従事する専門家は72,609人に上り、そのうち13,138人が大学院レベルの医学教育を受けている。また、国内には123の病院が存在する。

しかし、病院の85%は50年以上経過した施設である。現在、政府や国際ドナーからの資金援助により、新しい施設の建設が進められている。同様に、高額医療機器もドナーの支援によって導入されている。 しかし、キルギスには機器やインフラの維持管理を規定する明確な枠組みがなく、修理やアップグレードのための国内財源も不十分である。 そのため、MRI や CT スキャナーのような高度な医療技術は、 ビシュケクやオシュ、一部の地域拠点にある民間医療施設でしか利用できない(Moldoisaeva, S. 、その他、2022)。

このように、キルギスはセクターを超えたパートナーシップと医療インフラへの投資を通じて、公衆衛生の課題への取り組みを進める一方で、依然として大きなギャップが残っている。

 

 

さらなる行動のための主な提言

 

気候変動リスクを軽減し、医療分野の回復力を強化するために、キルギスは以下のことに重点を置くべきである:

・インフラへの投資:気候変動に強い医療施設を建設し、緊急時への備えと対応計画を改善する。

・労働力不足への対応:熟練した医療従事者を優先的に農村部に配置し、包括的な医療サービスの提供を実現する。

・気候適応戦略の策定:熱波、干ばつ、洪水などの自然災害による悪影響を軽減するための対策を実施する。

・国民の意識向上:気候変動に関連する健康リスクや予防措置について、地域社会や関係者に情報提供を行う。

・研究資金の増額:エビデンスに基づく政策立案と気候適応型の医療戦略を支援する。

 

 

結論

 

キルギスの医療分野は、主要産業の中でも気候変動の影響を特に受けやすい脆弱な分野である。初期の改革は進んでいるものの、インフラ強化、労働力の育成、医療サービスへのアクセス拡大には、持続的な取り組みが必要である。深刻化する気候変動のリスクから現在そして将来世代の健康と福祉を守るため、総合的で適応力のあるアプローチが不可欠である。

 

(Alisheva Kamila)

 

 

参考文献:

  1. Akipress news wire. https://shorturl.at/D8dxK 
  2. Economist kg news wire. https://goo.su/4Xh2Ja 
  3. eHealth. https://cez.med.kg/ 
  4. Moldoisaeva, S., et al. (2022). Kyrgyzstan. Brief description of the healthcare system. European Observatory on Health Systems and Policies. https://goo.su/lgZzeoo 
  5. Setoguchi, S., Leddin, D., Metz, G., & Omary, M. B. (2022). Climate change, health, and health care systems: a global perspective. Gastroenterology, 162(6), 1549-1555. https://shorturl.at/CDbY5 
  6. 24.kg news wire. https://shorturl.at/biC8J
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